ヨガのクラスの最後はシャバーサナで終わります。
このとき「脇の下をこぶしひとつ分空ける」とよく言われますが、なぜ“こぶしひとつ分”なのでしょう?
この記事では、仰向けになっているときの肩甲骨と腕を解剖学的に分析して、その理由を考察します。

シャバーサナのときに空ける脇の下のスペースの大きさ
シャバーサナのアライメントとして仰向けになったら、「両足は腰幅程度に開いて、脇の下にこぶしひとつ分のスペースを空ける」というものがあります。
足の幅は骨盤に沿うと、腰幅程度が自然というのは納得いくのですが、脇の下のスペースがこぶしひとつ分なのはなぜなのでしょう?
こぶしの代わりに卵やレモンとすることもありますが、いずれにしろ、体感としては微妙な空け具合です。
日本では昔から「大の字になって寝る」という表現がありますが、大の字はこぶしひとつ分とは随分大きな差がありますよね。
「気をつけ」のままで仰向けになっているときの肩甲骨の位置
さて、私たちは子供の頃からの経験の積み重ねで、何事にも「気をつけ」をすることが習慣として身についています。
「気をつけ」のとき、肩甲骨は背中の中央に寄せ気味です。
人によっては仰向けになった際にも、無意識に「気をつけ」を保とうとすることがあるようです。
仰向けになったときに床との接地面が広いほど、体重が分散されて安定すると言われていますが、肩甲骨を寄せて背中をマットに押しつけることでそれを行っていると勘違いしているのかもしれませんね。

余計な力を抜いた肩甲骨の位置
「気をつけ」で肩甲骨を寄せた状態は、本来の肩甲骨の位置ではありません。
肩甲骨は思っているよりも外に向って、広がるように付いているのです。
肩甲骨を寄せるのをやめると、左右の肩甲骨の間が開き、その状態で仰向けになると背中と床の接地面が広くなります。
また、肩甲骨を寄せるのをやめるとか、肩甲骨が外に広がるイメージをするということは、胴体の軸である脊椎を支えるインナーマッスルがそれまで行っていた余計ことをやめることにもなります。
首、背中、腰の緊張もなくなり、さらに床との接地面が増えて安定することでしょう。
肩甲骨と腕の関係
そもそも脇の下にスペースを作るように身体を動かすということは、上腕骨と肩甲骨に働きかけるということです。
ところが、寝ながら「気をつけ」で肩甲骨を寄せて背中をマットに押しつけている状態では、肘が内側に向き、脇の下が締まりやすくなります。
脇の下を締める腕の力で、肩甲骨を寄せた体勢を維持しようという意思の表れかもしれません。
反対に肩甲骨を寄せるのをやめて、外に広がること許せば、腕の余計な力も抜けて肘が外側を向き、脇の下に余裕が生まれます。
その余裕こそが、こぶしひとつ分に相当するわけです。
つまり、必要のない力を解くと、必然的に脇の下にこぶしひとつ分のスペースができるということですね。
おわりに
「脇の下にこぶしひとつ分のスペースを空ける」というのは、そうなるのが骨格的に必然であって、そのようにするものではありません。
頭や胴体、腕、脚が適度な張りを持って動いて仰向けになり、無意識に寄せがちな肩甲骨を外に広がるように動く許していくと、「いつの間にか脇の下に、こぶしひとつ分のスペースが空いていた」ということなのだと思います。
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