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私たちがいつの間にか身体を固めてしまう理由を解剖学的に考える

Body Mapping

何とは無しに日々を過ごしていると、「いつの間にか身体を固めていた」「思わず力が入っていた」という状況に遭遇することがよくあると思います。
誰だってそんなに緊張しながら生活したいわけはないはずですが、どうしても緊張状態から抜けられず、それが習慣化している人も多いでしょう。
ではなぜ、いつの間にか身体を固めてしまうのでしょう?今回は解剖学の視点から、身体を固めるからくりを考察します。

身体を固める始まりは頭を引っ込めること

私たちは「〜しなくては」という義務感や「〜しよう」という行き過ぎた意欲など、様々なストレスを日常的に抱えています。
これらのストレスを感じた瞬間に、首の後ろで頭蓋骨を支えている筋肉が縮みます。
客観的にそれは、頭を胴体の方へ引っ込めるという動作になります。

環椎後頭関節は非常に繊細に動く

頭を胴体の方へ引っ込めることを分析すると、その始まりは頭と首のつなぎ目となる環椎後頭関節(AOジョイント、トップジョイントなどとも呼ばれる)です。
環椎(第1頸椎)の上面には頭蓋骨を乗せる窪みがあり、その上でわずかな角度(約15度)で前後に動きます。
それは視線を上下に軽く動かす程度にうなずく動作ですが、実際にそれを無意識にできることの方が難しいようです。

環椎後頭関節から動かさずにもっと下の頸椎から動かす

ヨガのレッスンには、頭から頸椎、胸椎、腰椎と順番に丸めるように動かす、ロールダウンが取り入れられることがありますね。
でも残念ながら、ほとんどの人が環椎後頭関節を固めてしまい、7個ある頸椎の途中からしか動かせていません。
身体の一番上にある関節である、環椎後頭関節での動きが制限されると、連動的にその下の関節まで可動域が制限されてしまうものなのです。
その下の関節には、脊椎の中にある関節はもちろんのこと、脊椎とつながっている肩や腕、股関節などの脚など、まさに全身の関節が含まれます。

頭を引っ込めたくなるのは環椎後頭関節の位置が要因のひとつ

どうして、環椎後頭関節はそれほどまでに固まりやすいのでしょうか?
生きるための防御反応などの脳神経上の要因のほか、骨格の構造上にも要因があります。
環椎後頭関節は頭蓋骨の真ん中よりも少し後ろに位置しています。
この位置関係を重力の点からみると、頭蓋骨はうなずいて下を向く動作に有利な構造といえます。
さらにあごの骨(下顎骨)が前にあるので、余計に頭蓋骨に対する重力は前の方へいきます。

下を向きっ放しにならないために発達した首の後ろの筋肉

それ故、下を向きっ放しにならないように、後頭下筋(大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)を始めとした、顔を上げたり上を向いたりする筋肉が首の後ろにたくさんついています。
首の前で下を向く動作を助ける筋肉よりも、数が多く、厚い層で支えているのです。
これらの筋肉は日常生活で何が起こっても身体がすぐに反応できるように発達しています。

おわりに

このような構造のおかげで、私たちは毎日を無事に過ごすことができます。
同時に過度に機能して、必要とされる以上の力が使われてしまうのもしばしば。
一生懸命になりすぎることによって、無意識に自然と首の後ろを縮めて、頭を胴体の方へ引っ込めようとすることが起きるのです。
首の余計な力を解放したいと思うなら、環椎後頭関節の上で頭が繊細に動けることを敢えて思考して、意識的にコントロールするのも大切なことなのかもしれません。

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