陰ヨガの代表的なポーズのひとつ、スリーピングスワンを解剖学的に考察するシリーズの第2弾。
前に出した脚の方のお尻に深いストレッチを加えるポーズです。膝の位置を移動したり、かかとを恥骨から遠ざけたりと、微妙に異なるバリエーションでストレッチの度合いを楽しむこともできます。
そこで、今回は脚のポジションの違いがストレッチにどう関わるのかを考察します。
スリーピングスワンのバリエーション
陰ヨガのスワン系のポーズは、両手と両膝を床に着いたテーブルポジションから片方の膝を前に出し、お尻を床に落とした状態となります。
そうすると、前に出した脚側のお尻がストレッチされます。
このとき、前に着いた膝は手の位置よりも外側になることが多いです。
なぜなら、その方が股関節の屈曲を起こしやすいから(→詳しくは「陰ヨガのポーズを考える|スリーピングスワン①お尻が伸びる理由」)。
ところが、膝の位置を身体の中央に寄せた方がよりストレッチされるという人もいます。
さらには、骨の個体差による形や柔軟性によっては、かかとを恥骨から遠ざけた方がいいという人もいることでしょう。
お尻の外側がストレッチされる仕組み
スワン系のターゲットエリアとなるのはお尻の外側から太ももにかけてで、特に大臀筋や梨状筋です。
これらの筋肉の起始(骨との付着部分)は骨盤の仙腸関節付近で、停止(もう一方の骨との付着部分)は太ももの骨(大腿骨)の大転子です。
ストレッチとは起始と停止の距離が離れることによって、筋肉が伸びるということです。
股関節で屈曲が起こると、屈曲が起こっていないときと比べて、大臀筋や梨状筋の起始と停止は離れます。
それで「お尻が伸びてるな〜」と実感するわけです。
股関節を内転させてストレッチをもっと深める
ところがある程度まで屈曲すると、大腿骨の大転子と骨盤が当たるため、屈曲のみを行うには限界が出ます。
そこで大転子が屈曲の邪魔にならないよう、自然と外旋して膝が外側に向くように私たちの身体はデザインされています。
これだけでも充分にストレッチされていることでしょう。
しかしがなら、ここで内転を加えることによって、大臀筋と梨状筋の起始と停止はさらに離れます。
膝を身体の中央に寄せる、あるいは手と手の間に移動させるといった動作が内転を加える動きになります。
途中で体勢を変えることでもできる
陰ヨガは3〜5分と長くキープするので、膝を手よりも外側に向けた体勢で始めて、ストレッチに身体が慣れてきたら膝を移動させて、より強いストレッチにすることも可能です。
このときに膝を移動させる代わりに、時計の針が動くように上体を膝の方に向けるという方法でも、同じように内転を加えることになります。
さらに、上体を外側にねじれば、連動して股関節の屈曲と内転も深くなります。
おわりに
膝やかかとの位置が少し違うだけでも、大臀筋や梨状筋の起始と停止の距離は変わってきます。
人それぞれの骨の形や習慣によっても左右されるので、皆が同じように屈曲や内転をして同様のストレッチを生み出すとは限りません。
それこそがスリーピングスワンのポーズのバリエーションですから、色々な体勢を試して、自分にとって気持ちよくストレッチできる体勢を探してくださいね。
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