ヨガジャーナルオンラインで【体の「負」にまつわる思い込みシリーズ】を連載中! これまでの記事はこちらからご覧いただけます

股関節について考える①股関節を使おうと思うと逆にうまく使えなくなる

Thinking Body

ヨガで前屈をする際に「股関節で屈曲しよう」と思ったとき、身体に起こっていることを解剖学的に考察します。
また、ヨガでよく言われる「股関節で前屈」という言葉による思い込みについて、筆者の経験を踏まえて紹介します。

ヨガをしているとやたらと股関節が気になる

筆者がヨガを行うようになって、気に掛けるようになったのが股関節です。
それまでの日常生活では、腰からお尻にかけてを何となく意識してはいましたが、「ここを動かすんだ」というつもりで股関節というピンポイントの部分を思い描いたことはありませんでした。
そんな中、ヨガのレッスンを受けるようになって、「股関節から前屈」というようにやたらと股関節で動くことを言われるようになり、「もっと股関節で動くようにしなきゃいけないんだな」と心掛けるようになったのです。

「股関節で前屈」=「股関節“だけ”で前屈」という思い込み

「股関節で前屈」は、ヨガのもう一つの注意点「背中はまっすぐ」と相互的なものだと思います。
背中(正確には頭からお尻まで)を一直線として、股関節の一点で屈曲するという、前屈の理想のイメージがあるためでしょう。
これによって筆者の場合、「ヨガの前屈は股関節“だけ”で行わなければならない」という思い込みがいつの間にかでき上がっていたようでした。

股関節“だけ”での前屈はできない理由

しかしながら実際には、股関節“だけ”で前屈するのはあり得ないことです。
なぜなら、私たちの身体には、股関節以外にもたくさんの関節があります。
例えば股関節の延長にある脊椎は24個の椎骨という骨の連なりで、それぞれに関節があるのですから、脊椎だけでも相当な数です。
ちなみに人間の全身の関節数は約260だそう。
そして、これらの関節は独立的に動くのではなく、全て連動的に動きます。
股関節を動かしたいなら、同時に他の関節も動かなければならないのです。

股関節“だけ”で前屈しようとして身体に起こること

身体がそのような構造になっているにも拘わらず、「股関節“だけ”で前屈しよう」と思うと、その思いが余計なことを身体に引き起こします。
身体の前面に必要以上の力を入れてしまうのです。
必要以上といっても見た目にはっきりわかるほどのものではないでしょう。
それでもいつの間にか、お腹を引き締めているとか、太ももの前側が緊張しているという人は少なくないはずです。

身体の前面に必要以上の力が入っていると、それにつながる腸腰筋(大腰筋と腸骨筋)にもその緊張が伝わります。
腸腰筋は股関節の屈曲を行う深層筋なので、この状態では当然のことながら、本来の股関節の可動域を活かせないまま、無理やり使うはめになるというわけです。

おわりに

股関節周りにはリンパ管など、身体の機能を支える重要な器官が通っていることから、健康や美容の面でも、股関節を使うことが注目されています。
でも、股関節に固執するあまり、股関節を固めながら無理に使っていては、実にもったいない話ではないでしょうか。
「股関節で前屈」をしたいなら、股関節以外のところに目を向けてみるのもいいかもしれません。

タイトルとURLをコピーしました