ヨガでは前屈をするときに、膝を伸ばすように言われることがあります。
実際に膝をピンと伸ばして股関節から前屈していると、太ももの裏側などがとてもストレッチされているように感じるでしょう。
この記事では、意識的に膝を伸ばし、股関節で前屈しようとすると何が起こるのか、それが感覚にどう影響するのかを考察します。

前屈で身体の前面に起こっていること
ヨガでは「背中をまっすぐにしたまま、股関節で前屈する」と教わります。
この誘導の言葉が引き金となって、股関節“だけ”を動かそうとしてしまうことがあります。
加えて、太ももの裏側の筋肉(ハムストリング)の起始と停止を遠ざけて、ストレッチをより確実に行うため、膝を伸ばすようなセッティングを行うこともあります。
このような場合、身体の前面(主に胸やお腹、太ももの前側)には必要以上に力が入っているものです。
それに伴って、股関節を屈曲させる筋肉をも緊張させ、結果的に股関節の可動域を逆に制限することになります。
必要以上に力を入れてしまう原点、タダーサナ
そもそも前屈に入る前のタダーサナで「足の親指と小指の付け根、かかとの3点を意識する」「下から順番に積み上げるように立つ」「お腹が出ないように、腰が反り過ぎないようにようにする」「胸を広げる」など、たくさんのアライメントに関する注意を受けます。
「気をつけ」という良い姿勢を尊ぶ文化で育ってきた私たちは、ヨガでこのような指導を受けると、それを忠実に再現しようと無意識に力んでしまう習慣があるようです。
全身を力ませるタダーサナ+前面を縮める前屈
タダーサナでの、この無意識に力んでしまう習慣によって必ず起こっているのが、頭を胴体に向って引っ込めるというものです。
頭を胴体に向って引っ込めているということは、身体全体を短くしていることになります。
その上で「股関節“だけ”で前屈」を意識すると、さらに前面に力が入れて短くすることになります。
「股関節を引き込むように」といった誘導の言葉もありますね。
そういった言葉を聞くと、胴体や脚を股関節に向って縮めるということを無意識にしています。
このように、タダーサナからの前屈には、身体を力ませ、縮める相乗が起こりやすいのだと考えられます。
前屈で身体の背面で起こっていること
身体の前面が縮まっている一方、背面はどうなっているのかというと、当然のことながら伸びています。
その伸びのイメージは、端はしっかりしていても、伸びているところは細く薄くなるゴムのようなものでしょう。
この状態で前屈すると、ゴムはさらに伸び、中ほどはより細くなります。

膝を伸ばして前屈する方がストレッチできると感じる理由
立位であれ、座位であれ、前屈をするときに膝を伸ばして行うと、ハムストリングや大臀筋などにストレッチが非常に効いているように感じられる人は多いと思います。
ゴムを伸ばせるだけ伸ばした状態を思い浮かべてください。
限界まで伸びている部分は、細く、今にもちぎれそうな状態です。
筆者が考えるに、「すごくストレッチできた」という達成感は、このようなギリギリの状態によって得られるのではないでしょうか。
おわりに
どこかを固めて短くしていれば、そこと拮抗する部分は余計に伸びています。
そこに前屈という動作を加えることで、ハムストリングや大臀筋など、筋肉の一部のストレッチをより深めているのは事実でしょう。
でも、ゴムの伸びて細くなったところはもろいです。
筋肉の一部だけのストレッチに固執すると、無理をし過ぎて、ケガをすることがあるので、注意してくださいね。
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