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抽象的な言葉でのヨガの誘導で身体が固まる!?

Thinking Body

ハスヨガマガジンの「ヨガの心地よい感覚を生徒さんに受け取ってもらいたい。どうやって誘導する?ヨガインストラクターのスキルアップ」で、ヨガのレッスンで生徒さんを誘導する際に、抽象的な表現より具体的な言葉の方がいいのではないかと提案しました。
そこで抽象的な表現や特定のイメージによって、どのような問題が起こり得るのか、筆者の体験を踏まえて考察していきます。

擬態語で身体が迷う

キラキラ、フワフワ、モヤモヤなど、実際に音としては聞こえていない状態をあたかもそれらしく描写した言葉が擬態語です。
日本語では非常によく使われるもので、私たちは日常的に何気なく使っていますね。
でも、実際には存在しないものを言語化しているため、体中の筋肉がその表現に対してどう反応するのかは人それぞれです。

テーブルポジションで床に手を着くときなどに、手を「ソッと置いて」とか「フンワリと置いて」と言われることがあります。
手を床に着くと無意識に手首や肩に力が入りがちなので、それを解除する目的で床に置く手の状態を「ソッと」「フンワリと」と表現しているのだと思われます。
しかしながら、筆者はその状態を実際に表現しようとするあまり、手だけで動いて、肘や肩は逆に硬くなってしまうことがありました。

曖昧な形容詞でも身体が迷う

また、「手を床に優しく置いて」と言われたときもうまくいきませんでした。
まずてのひらの根元を床に着けて腕を固定させ、それから指先を床に降ろすという動作で「優しく」を再現しようとしていました。
つまり、てのひらの根元を床に着けた時点で、手首も肘も肩も固まっていたのです。

特定のイメージ誘導で身体が勘違いする

もうひとつ、呼吸に関する誘導のイメージでとんでもない問題を引き起こしたことがあります。
「お腹を風船のように膨らませる」というものです。
筆者は呼吸の練習でこの誘導をされる度に、ゴム風船に一生懸命息を送り込んで膨らませる様子を思い出していました。
その動作をお腹に対して再現しようとして、胸や背中を緊張させていたのです。
しかも「腹式呼吸とはこうでなければならない」と無意識に思い込んでしまって何年も繰り返し、咳喘息をひどくさせることになりました。

抽象的な表現や特定のイメージが身体と合致する人もいる

これらの表現やイメージが悪いわけではありません。
「ソッと」や「フンワリと」をそのまま受け入れて、動作につなげられる人もいると思います。
「風船のように」と言われて空中に浮かぶ軽やかな風船を思い出す人もいることでしょう。
その人の性格や置かれている環境などによって、受け取り方も身体がどう動くかも様々です。

ヨガのレッスンで使われる誘導の言葉はいずれも、その言葉を使おうと判断した、インストラクター本人がその言葉で心地よいと思えた経験があるからなのでしょう。
実体験が伴っていなければ、生徒さんに響かないというのも事実です。

おわりに

ヨガの誘導の言葉選びに正解・不正解はありません。
インストラクターが自分の経験則からこれは良いと思った表現を使うのが一番ではあります。
ただ、それが他の人と全く同じ体験となるかどうかはわかりません。
なので、レッスン中に生徒さんが自分の誘導で身体を逆に硬くさせてしまっていると気付いたら、別の表現も加えてみるなど、臨機応変に対応できるといいですね。

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