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膝を伸ばすよりも、敢えて膝を曲げて前屈することを選択するのもあり

Thinking Body

ヨガの前屈は膝を伸ばすものと思われがちですが、膝を曲げる(緩める)前屈もあります。
膝を曲げた前屈には、無理をしないためだけでない、もっと積極的な意義もあると筆者は考えます。
そこでこの記事では、「前屈で膝を曲げてもいい」といわれる背景と、敢えて曲げるべき理由について考察します。

なぜ前屈で「膝を曲げてもいい」と言われるのか

ヨガのレッスンを受けていると、前屈で「膝を曲げて(緩めて)も大丈夫ですよ」と声を掛けられることがありますね。
それはヨガ初心者や身体が硬い人への対応策として、膝を伸ばすよりも曲げて前屈することでケガのリスクを減らす目的がほとんどだと思います。

膝を伸ばすと必然的に、太ももの裏側やふくらはぎ(ハムストリングやヒラメ筋)などの筋肉の起始と停止が遠ざかり、それらの筋肉がストレッチできるようにセッティングされます。
そこに前屈が加わることで、それらの筋肉のストレッチが増長されることになります。
ところが、日頃、ハムストリングやヒラメ筋を固めているのが習慣になっていると、急なストレッチが負荷となって筋肉を傷めることになります。
だから、膝を曲げることによって、ハムストリングやヒラメ筋の起始と停止を近づけ、負荷の少ないストレッチに移行しようというわけです。

膝を伸ばした前屈のデメリット

膝を伸ばした前屈は、いわゆるアーサナとしての理想形で、「ストレッチが効いている」という達成感も味わえます。

その反面、身体の前面や背中などを固めて、ハムストリングやヒラメ筋などの筋肉の一部のみでストレッチを行っています。
それは身体の一部を固めて縮め、他の部分を無理に伸ばすようなもの。
故に、無理に伸ばしたところを傷めやすいです。

さらに、そのように身体の一方を固めて縮めながら前屈しているとき、思考的には前屈している最中を静止した状態と捉えています。
前屈という体勢をひとつの形に当てはめ、全身の関節の自由度を制限してしまうことになるのです。

膝を曲げた前屈は身体が硬い人の救済措置だけではない

膝は股関節や足首と連動しています。
股関節は骨盤を通して脊椎や腕と、足首はかかとや足を構成する足裏のたくさんの関節と連動しています。
膝をわずかに曲げる、あるいは緩めるという行為は、制限されていた全身の関節の自由度を連動的に取り戻すという意味でもあります。

そうすると、それまで固めていた背中が伸びきます。
お腹や太ももの前側などの力も抜けてくることでしょう。
つまり、ハムストリングやヒラメ筋などの一部ではなく、身体の前面も背面も長く使える、全身のストレッチになり得るのです。

前屈し続けると考えることで固めることを防ぐ

さて、いくら全身でストレッチをしようとして膝を曲げたとしても、前屈を静止した状態と考えてしまうと、その形に身体を当てはめようとして、途端に身体の前面に力が入ります。
そこで、「前屈をし続ける」というように、ひとつの体勢にあっても何度も動作をしていると思ってみてください。
さらに「股関節は天井に向い続ける」「頭は床の方に向い続ける」など、具体的な動作の指示を頭の中で唱えてみるのもいいと思います。
身体の前面も背面も、勝手に伸びてくれることでしょう。

おわりに

膝を曲げる前屈は、一部を固めて、他の部分をギリギリまで伸ばすことで達成感を得ていたのに対し、身体の上から下まで万遍なく伸ばすので、ストレッチ感が物足りないと感じるかもしれません。
でも、それはその人がそう感じていることであって、身体の中でストレッチは実際に起こっています。
膝を伸ばした前屈で痛みや違和感を感じるなら、敢えて膝を曲げて全身をストレッチする選択肢もあることを覚えておくのもいいでしょう。

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