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座っていると腰が痛くなるのは「落ち着きたくなる」から

Thinking Body

座るという動作について解剖学的な視点から分析し、長時間座っていると腰が痛くなる理由について考察します。
さらにその背景にある、どういう状態を座るということだと思っているのかが動作として身体にどう影響するのかについて、ひも解いていきます。

座っていると腰が痛くなるという現象

座っていると腰が痛くなることがありますね。
痛みを和らげようとして、上半身を揺らしてみたり、座り直してみたりすることでしょう。
それで一時的にはよくなりますが、しばらくすると同じところが痛くなってくるの繰り返しをしている人は多いと思います。

これは座って同じ体勢を続けているため、筋肉が固まってしまっていることに起因しているといわれています。
確かに同じ体勢のままだと筋肉の使い方に偏りが生じ、それが痛みを引き起こします。しかしながら、それだけが腰の痛みの要因とはいえません。

腰が痛くない状態とは脊椎が自然なカーブを描いているとき

私たちの身体は脊椎がカーブを描いてバランスをとることで直立を可能にしています。
そして、脊椎は椎骨という24個の小さな骨の連なりでできており、椎骨と椎骨の間は椎間板というクッションを挟んで間が空いています。
腰が痛くない状態を「良い姿勢」と位置付けるなら、椎骨と椎骨の間が詰まらず、脊椎全体は自然なカーブを描いている状態がそれだといえます。
脊椎が自由に動けて、座り続けていたとしても、ひとところに留まらずに動ける準備ができている、ニュートラルな体勢です。

腰が痛いときは椎骨と椎骨の間が詰まっている

ところが、私たちはことあるごとに、頭を胴体の方へ引っ込めて、椎骨と椎骨の間を詰まらせようとする習慣があります。
特に座るといった、動作のベクトルが上から下へ移行するときに、椎骨と椎骨の詰まりは起こりがちです。
椎骨と椎骨の間には脊柱起立筋などのインナーマッスルが付着していています。
椎骨と椎骨の間が詰まるということはこれらのインナーマッスルが固まることであり、脊椎が動きにくくなるということ。
そのうえで無理に体勢を維持したり、動かそうとしたりするので、腰に負担が掛かるのです。

坐骨が座面に着いた後に「落ち着きたい」という余計な動作がある

さらに、座るという行為の最後に脊椎の自然なカーブを歪める、余計な動作があります。
それは坐骨が座面に着いた瞬間に、骨盤をわずかながらも後傾させて胴体を座面に押し付けるというものです。
この最後のちょっとした動作によって、「ちゃんと座った」「腰を落ち着けた」といった感覚を味わえるのだと思います。
その一方で、脊椎のカーブを歪めているので、腰が痛くないニュートラルな体勢ではなくなります。

おわりに

坐骨が座面に着いてバランスがとれていれば、その時点で充分座っていることになります。
胴体や股関節に余計な圧がかかっておらず、脚も自由に動かせるので、身体としてはそちらの方が楽なはずです。

でも、坐骨が座面に着地しただけでは「お尻が浮いている」「ちゃんと座っていない」というような落ち着かない思いに駆られるかもしれません。
それはその人の中で「胴体を座面に押し付けるまでが座るという動作である」と無意識に定義づけられている可能性があります。
そんなときは、落ち着かない中途半端な座り方で居続けるのを試してみるのもいいと思います。

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